記事ランキング マンガ 連載・特集

元日テレアナウンサー・石川牧子さんが72歳で老人ホームへ。3LDKのマンションを手放して得たものとは?

公開日

更新日

依田邦代

同年代の中で暮らすメリットは

老人ホームに入居した人からは、「まわりが年寄りばかりで気が滅入る」という声も聞くが、石川さんはまわりに同年代の人がいることのメリットをこう語る。

「ここでは死やお墓、葬儀、病気のことを遠慮なく話せます。自分の関心ごとをまわりと共有できて、共感し合えるのはうれしいものです」

確かに、若い人がいたら、そういう話題は避けてしまう。

「彼らの興味は違うところにありますから。でも同年代なら臆面もなく、笑ってそういう話ができる。なんでも話せる安心感があります」

それまで育ってきた環境はそれぞれ違っても、「晩年の人間として、終わり方に氏素性は関係ない」と石川さん。

「先日も食事をしながら『私は実家のお墓に入るんだけど、私は石川家で最後の人間。私の後は誰もいないから、自分が入る前に墓じまいをしてしまおうと思うのよね』という話をしたんです。そうすると、まわりの人たちも『そうよね』と共感してくれて、うれしかったです」

「墓じまい」は今の石川さんにとって大きなテーマだ。家の始末や、自分自身の遺産の始末をいかにきれいに行うかは、当事者にとっては重要事項。自分の関心ごとが受け入れてもらえる環境は貴重だ。そんな体験からも、こう断言する。「若い人といるより、同年代の集まりのほうが絶対にいい」。

「林真理子さんが『80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間』という本の中で『できるだけ若い方と接したほうがいい』ということを書いていらっしゃるそうですが、私は『同年代の集まりのほうが絶対にいい』と思っています。林さんがそうおっしゃるのは、まだお若いからじゃないかしら」

石川さんが入居している老人ホームの平均年齢は80代半ばくらい。

「ここで私は下から2番目に若いので、先輩方の加齢に伴う体の変化を実際に見せてもらっています。まわりに生きたお手本がいて、本で得た知識が目の前で展開されるわけです。そして、皆さんのお話の一つひとつが、『あぁ、そうなるんだな』『そうなんだ』と人生の予習になります」

いくら元気そうに見える人でも、長い年月生きてきた肉体の劣化に大差はないと石川さんは感じている。老人ホームは「老いの学校」。自分だけは年を取らない、と思っているとしたらそれは幻想。年齢を重ねることを前向きに受け止め、死の意味を受け入れる心構えができるようになったと言う。

終の住み処選びで一番、大切なこと

「私はここで友達を作りたいわけではなく、今までがちゃがちゃと回転の速い、音の洪水の中で仕事をしてきたので、ゆっくり穏やかで静かな生活を送りたい、と入居しました。ですが、選ぶ際の決め手は『人』でした」

6年前、たまたま知り合いがこの老人ホームで演奏することになり、その付き人として来訪した石川さん。聴きに来た人たちの穏やかで礼儀正しく、知的好奇心の旺盛な雰囲気に惹かれた。

「年齢を重ねてからも自分らしく過ごすためには、一緒に暮らす人たちはとても重要です。こういう方たちと一緒に暮らせるのなら、と思いました」

高齢者施設を選ぶときは、外観や設備、衛生面、食事などに目が行きがちだが、石川さんは「どういう人たちの集まりか、自分と雰囲気が合うかを感じ取ることはとても大事」だと言う。

「残りの人生をどう過ごしたいかによって違いますが、茶飲み友達をたくさん作りたいと思っているのならなおのこと、住んでいる人たちの雰囲気を見極めることは必要です。高齢で入居するわけですから、合わないからといって簡単に出てはいけないんです」

「いつも一緒にわいわい騒ぐサークル活動がしたいと思って入ったわけではない」という石川さんは、節度ある、つかず離れずの大人のおつき合いを心がけている。

「集団生活なので、明るくあいさつを交わすことは最低限、必要です。ここに入ってうれしかったのは、外から帰ると、知らない入居者の方でも『おかえりなさい』と言ってくれること。以前住んでいたマンションでは、『こんにちは』とか『こんばんは』でしたが、『おかえりなさい』と言われると、家に帰ってきた感じがして、心があたたかくなります」

人生の終盤をどう過ごしたいか、そのための環境をどう作るか、自分で決めて、実行した石川さんの軌跡は、後から続く私たちの心強い道しるべとなってくれる。

自分らしく老いる覚悟。元祖女性アナウンス部長 私、老人ホームに入りました!

青娥書房 

日本テレビのアナウンサーとして華やかなキャリアを積んだ石川牧子さんが、元気なうちに老人ホーム入居を選択したその理由と経緯をつづった手記。「高齢おひとりさまのためのお役立ち情報」も随所に掲載。

※詳細は下のボタンより。

▼あわせて読みたい▼

>>紅白歌合戦、あの歌手の豪華巨大衣装はジュディ・オングが原点だった!?「魅せられて」からのインスピレーションで誕生 >>仕事漬けだった私が変わった日【山田邦子さん】乳がんを機に見直した食事と睡眠、ストレスとの向き合い方 >>【高島礼子さん】52歳で離婚後、友達のいない自分に愕然…。一歩足を踏み出したら世界が広がり、今は一人焼肉もへっちゃらです[ターニングポイント#1]

撮影/佐山裕子(主婦の友社) 取材・文/依田邦代

60代読者モデルおすすめのリンクルクリームとは?

60代読者モデルおすすめのリンクルクリームとは?PR

詳細はこちら
画面トップへ移動